岩手県 安家川   蝉時雨と夏待ちヤマメ         其之十一

                           写真と文 大石 喜久徳


【歳とともに...

 

 

現役を引退してから10年ちょっと...。

 

当然のことだが、それから行動範囲は狭まった。

 

この安家川も、最後に訪れてから10数年も経つ。

 

最後に訪れたのは、ギジーの取材。担当は、なかの君だった...。

 

あの時は、5月の末か6月の初旬。

 

ヤマメの時期にはちょっと早い頃だったような...。

 

確か、そうだったはずなんだけどな...。

 

歳を取るたび、思い出したいことも思い出せなくなる。

 

逆に、思い出したくないことを思い出す...。

 

全く、困ったものだ。

 

とにかく、岩手内陸北部の渓流には、あの日以来入ってないのは確かだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


カワシンジュガイの立札。あの時は無かった。日付を見れば平成二十一年。なるほど!

あの時の主役はイワナだった。今回の主役はヤマメだった...。

 

 


 

 

 

【311を境に...】 

 

 

 

今年くらいから復興作業も落ち着くかな...。

 

なんて暢気に考えていた...。

 

しかしながら、年明け後も忙しさは変わらなかった。

 

いや、むしろ日本海側の豪雪によって復興作業は遅延した。

 

今回、そのツケが回って遅いゴールデンウィークの代休と相成った次第である。

 

既に、7月だというのにね...。

 

今回、代休を頂いたのは3日間である。

 

7月といえば、迷うことなくあゆ釣りだ。

 

震災の年、2回出来た...。

 

去年も2回出来た...。

 

今年は、6月中旬に栃木県の那珂川でやる予定だったが、生憎の渇水によって断念した...。

 

今年の解禁翌日、秋田県二ツ井の藤琴川で初釣り。

 

前夜は、八戸の連中と夜通しの宴会である。

 

昔は、良く川原宴会やってたけど、自分が引退してからは仕事優先で付き合いが悪くなったと愚痴られっぱなし...。

 

でも、大震災を境に自分の心境もだいぶ変わった。

 

津波と火災でシングルフックの製造拠点は壊滅的打撃...。

 

本業の建材やら冶工具、機械関係は石巻市渡波の現場で全て流失した。

 

ゼロからの出発どころか、マイナスからのスタート...。

 

普通の精神状態なら、閉鎖や廃業が当然なんだけど...。

 

周りの皆の後押しがあればこそ、ナニクソ根性で頑張ろうと思った。

 

支えてくれる皆のために...。

 

自分は、幸せ者である。

 

311の復興と共に、自分も復活した。

 

今更なんだけど、皆様ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

【予定変更の連発!】

 

 

 

翌日は生憎の雨。

 

鹿角の米代川上流であゆ釣りをするつもりでいたが、阿部さんからの情報によると鹿角近辺と岩手県境付近での大雨で、米代川上流は濁りであゆ釣りは無理だろうとのこと。

 

仕方なく青森県の岩木川に移動したのだが、こちらも局地的な豪雨によってあゆ釣りは不可能...。

 

さて、困った...。

 

このまま、下北半島の大畑川に移動するか、鹿角に入ってイワナ釣りに切り替えるか...。

 

そう考えているうちに、弘前インターから高速に乗って南下していた。

 

午前3時。鹿角インター着。

 

いつもの五の宮温泉の駐車場で仮眠し、朝風呂に入って様子を伺った...。

 

午前7時。駄目元で阿部さんに電話をしたら、呆気なく電話に出た...。

 

釣りしてんの?

 

近くに居ます。

 

ん?

 

どうやら、温泉近くの米代川本流で川の様子を見てるという。

 

ならば、あそこ行きましょうか!

 

前回、入渓した例の川に再び行くことにした。

 

でも、阿部さん。

 

本当に渓流好きだね...。

 

でも、ここに住んでれば、誰でも毎日釣りに行くよね...。

 

自分も、この辺り好きだもの。

 

 

 

 

 

 

【二度あることは...】

 

 

 

雨の影響で、翌日のあゆ釣りは無理だと諦めた。

 

ならば、残り一日どうする...。

 

いつもの野性の感を頼りに南下を開始した。

 

岩手県安比。

 

帰りながら、岩手内陸の渓流やるか、それとも太平洋に抜けて沿岸渓流にするか...。

 

闇の中の安比川を覗いたが、真っ暗で何も見えない。

 

当然か...。

 

気づけば、浄法寺から葛巻に抜け、道の駅・葛巻高原で車泊していた。

 

目覚めたのは、午前4時前。

 

叩きつけるような雨で目が覚めた...。

 

単純に、無理だな...。

 

一度目が覚めてしまったら、二度寝は出来ない性分。

 

道の駅のトイレで洗顔し、歯ブラシを銜えて雨雲を見上げた...。

 

葛巻から一旦、小本に抜けてみた。

 

あゆは無理でも渓流なら何とかなりそうな雰囲気である。

 

国道を下って行くと、安家洞の文字が飛び込んできた途端、なんかもの凄い懐かしさというか、哀愁を感じてしまった。

 

ちょっと遠回りになるけど、行ってみるか...。

 

そう、いつもの気まぐれである...。

 

安家川の流れをみると、幾分増水はしているが濁りはない。

 

昔、遊漁券を買った酒屋で日釣り券を購入し、さらに上流を目指した。

 

もう、この辺からイワナのテリトリーだよなっていうポイントから入渓したのだが、蓋を開ければヤマメだらけ。

 

昨日もそうだったが、仕方ない。プロトのスプーンのテストでもするか...。

 

これまでセットしていたバフェットを外し、プロトスプーンに結び直してキャスト。ササ濁りの表層を流れに逆らわない程度にリトリーブすると、川底からギラリと光る魚影。ギラリとした次の瞬間、水中でもがくヤマメ。

 

もう、何十年も前から夏の時期に行っていたフロントフック仕様のスプーン。

 

いつか、自分で作りたいと考えていた。

 

初めてのプロトのブランクが出来たのは、一昨年の2月。

 

大震災の一ヶ月前だった。

 

このスプーンも、ようやく日の目を見る。

 

大震災を乗り越えて...。

 

今シーズン、もう少しテストを重ねて来年早々発売しますので、宜しくお願いいたします。

 

尚、姉妹品のエリア用も宜しくお願いいたします。

 

 

 



タックル

 

ロッド:オリジナル 6ft

 

リール:ザウバー 800

 

ライン:4Lb

 

ルアー:TROUT JAPAN

    プロトスプーン

 

    ミノー

    タックルハウス

       バフェット SD55/S55

 

フック:フィールド 2~3

       シーズンSP-3~4

    SEASON-2~3

    本流トラウト-3