秋田県 米代川水系   夏の終わりに...         其之十三

                           写真と文 大石 喜久徳

川岸のエグレから飛び出した尺イワナ。米代川の野生そのものだ...。

 

 

 

【あの日から2年6ヵ月

 

 

あの日から間もなく2年6ヵ月になる。

 

事あるごとに思い出すのは、あの日のこと。

 

あの年は、解禁日から好調だった。

 

解禁日の3月1日は、岩手県の気仙川本流でヒカリを釣り、釜石市の甲子川でアメマスを釣った...。

 

梶原とも、今年からレベルフィッシングの再興をしようと話していた。本業の建設・建築業も順調になってはいたが、最も気がかりだったのはレベルフィッシングの営業であった。

 

シングルフックの販売等は、全て問屋さん任せにしていたから本業の合間をみて釣具店廻りをしなきゃならないなっていう矢先。

 

本当は、もう釣りは辞めようと思っていた。

 

もちろん、レベルフィッシングも閉鎖しようとしていた。

 

井上氏が亡くなった年の夏、人生最後の釣りだと思い一週間ほど北海道の渓流を釣り歩いた。

 

もちろん、悔いは無かった。

 

10数年、釣りに飯を食べさせて貰ったから...。

 

普通の釣り人の一生分以上釣りをしたのだから。

 

北海道を釣り歩き、八戸から帰路の途中に安代ICで降りて最後の最後と思い米代川上流で幕を閉じようと考えた。

 

時期が時期だったので本流は不発に終わったが、支流ではイワナとヤマメが出迎えてくれた...。

 

8月末、ちょうど今頃の季節...。

 

レベルフィッシングの閉鎖を思い留めさせてくれたのは、梶原や菊地。そして、昔からの多くの釣友達だった。

 

今更だけど、ありがとうございます。

 

 

 

米代川上流周辺、景色も好きでそこに住む人達も好きだ。

 

だから、あの年の3月も行く予定だったのに...。

 

 

 

 

 

 

 


この日、阿部さんがヒットさせたヤマメ。色白の綺麗なヤマメだ

 

ミノーのシングルフックに不安を持ってる方、大丈夫ですよ!


 

 

 

【大雨の影響か...】

 

 

釣行当日、岩手県雫石町の水害現場を抜け出して、いつもの温泉宿の駐車場で阿部さんと待ち合わせをした。

 

今年の天候は、冬から大変なことになっていたのは承知の事実。

 

また、日本国中、ゲリラ豪雨や竜巻の被害は甚大な被害をもたらした。

 

当日も、半休を使って抜け出しての釣り。ある種の後ろめたさが残る...。

 

最近の釣行は、仕事絡みが多い。

 

まぁ、その方が個人的な経費が掛からなくてよろしい。

 

震災以降、給料も役員報酬も一切貰ってないからね...。

 

レベルフィッシングの売り上げも、全て仮設住宅のお姉さん達の給料。自分の手元には一円も入らないというから、なんだかな...。

 

でも、それで良いんじゃないかな。困った時はお互い様だから。

 

得意な脱線で、ごめんなさい。

 

 

さて、始めに入った川は温泉宿のすぐ近く。先日も入った川だったが、大雨の影響か、ルアーを追う魚影が見えない。

 

両岸が護岸されていて、出水の際に魚が身を潜める場所が少ないので、下流に流されてしまった可能性が高い。

 

夏前はかなり良型揃いだったので、この時期なら尺が1~2本出てもおかしくない状況だったので、誠に残念無念である。

 

早々に見切りをつけて、本流へ向かったら消防の訓練とか...。消防の方に丁寧に説明されて、本流を後にした。

 

残念そうな阿部さんの顔が印象的でした。

 

仕方あるまい...。

 

 

 


米代川の某支流の居着きイワナ

 

 

 

【ニジマスの記憶...

 

 

次に向かったのは、本流から一山越えたポイントだった。

 

この渓流も、米代川の支流である。

 

昔は、このような規模の渓流ばかり釣り歩いていた。もちろん、取材なんかでもこうした渓流を好んでいたような...。

 

本流育ちのようなビッグサイズは望めないが、8寸9寸のヤマメならかなりの確率でヒットするから油断は出来ない。

 

この渓流も大昔、入渓した記憶がある。

 

多分、誰かと取材したはずだ...。

 

でも、あの時はニジマスばっかりヒットした。近くの養魚場から逃げ出したニジマス...。

 

今では、あの養魚場は閉鎖されているという。

 

しかしながら、この渓流も序盤は芳しくなかった。

 

大雨の影響か、それとも前々日に釣り人が入渓したのか、見た目の一級ポイントからの反応は芳しくなかった。

 

ルアーを追うのは新子ばかり。

 

時折ヒットするのも6寸程度...。

 

ようやく均衡を破ったのは、阿部さんだった。

 

この渓流にしては似つかわない、色白のヤマメだった。

 

サイズは8寸ほどだが、これまで幾多の災難から身を守ってきた、この渓流の強者そのものである。

 

でも、それから暫く新子の攻撃は続いた...。

 

 

 

 

鹿角市在住、シーズン中は余程の悪天候でなければ連日米代川上流域のパトロールをしている。本業の仕事は、多分しているだろう...。

 

 

 

【綺麗事なんだよね...】

 

 

午前7時前。

 

半休を使って現場を抜け出してきたので、戻る時間を考えればあと2~3時間しか釣りは出来ない。

 

残された時間内でどんな場面に遭遇するのかは、誰にも分からない。

 

どんなことでもそうだが、結果が全てである。

 

釣りも、釣れなければ話にならない。

 

現役当時、一度だけ全く釣れないのに原稿を書いたことがある。それも自分の連載で...。

 

まぁ、この企画の一発目の大畑川もボウズなのに書いたんだから、度胸はあるんじゃないかな...。

 

でも、釣れた釣れた!とか、尺オーバー連発!なんて夢物語より、これしか釣れませんでしたとか、全く釣れませんでしたっていう方が、嘘偽りなくて良いと思うんだよね...。

 

実際、それしか釣れなければ仕方ないのだから。

 

何時の時代も、釣る人が凄いとか、尊敬されるとかいうのはちょっと違う気がする。もちろん、自分もそうした業界の風潮に嫌気がさして現役引退を決意したんだから...。

 

有名になれば、妬みの的になる。

 

それでも、有名になりたいのならそれ相応の神経の太さが必要。

 

残念ながら、あの時の自分にはそんな太い神経は無かったし、約束した時間も残ってなかった。素直に引退したいって言ったって引退なんてさせて貰えなかったはずだし...。

 

311の大震災がなければ、こうしてへんちくりんな文章を書いていなかったし、全て過去の笑い話になっていたろう...。

 

釣りは、時の運。

 

釣れる時は釣れる。釣れない時は釣れない。

 

ほら、また変なこと考えていると真っ黒な砲弾がミノー目掛けて突っ込んできやがった。

 

これが結果というものか...。

 

 

人生、綺麗事じゃないんだよね...。

 

 

 

 

 

8月末、初秋の風を感じた...。

 

 

 

タックル

 

ロッド:オリジナル 5ft

 

リール:カーディナル33

 

ライン:4Lb

 

ルアー:TROUT JAPAN

    スプーン

    姫神 3,6g

 

    ミノー

    タックルハウス

       バフェット SD55/S55  

          SD65/S65

 

フック:シーズンSP-3~4

    SEASON-2~3